Quantcast
Channel: 流通 –データ・マックス NETIB-NEWS
Viewing all 777 articles
Browse latest View live

福岡パルコ、春のリニューアルで九州初出店ブランド続々

$
0
0

 全国で商業施設「パルコ」を20店舗以上展開する(株)パルコ(東証一部、本社:東京都渋谷区、牧山浩三社長)は、2018年春から初夏にかけて全国のパルコで全136区画(約1万3,800m2)のリニューアルを実施する。

 福岡パルコでは、九州初となるテナントが続々出店する。カナダ発のグローバルアクセサリーブランド「Herschel SUPPLY COMPANY(ハーシェルサプライカンパニー)」のほか、柄を彫刻してハンドステッチ(手縫い針で運針したような縫い目が見えるような加工)で繋いでつくり上げる手法が特徴的な「Carving Tribes(カービングトライブス)」や、韓国屋台料理「ポチャ」など、新規出店13店舗中7店舗が九州初上陸のブランドとなる。

九州初出店のハーシェルサプライカンパニーとカービングトライブス

 また、福岡パルコ本館2階には「ニュースタアby meetscalstore acidgallery」が全国初出店をはたす。同店は「世に広く出てないけど、さまざまなジャンルのぴかっと光る“ニュースタア”」をテーマに掲げ、人気ブランドの仲間入りをはたすかもしれない“原石ブランド”を常時50種類そろえる。

 パルコは今回のリニューアルにより、高感度な大人世代に向けた心豊かなライフスタイルアイテムの充実を図る。

【代 源太朗】


地方スーパーの生き残り策(8)

$
0
0

 お客さま第一主義。多くの小売業が経営の中心にうたっている言葉である。この言葉はお客の要望や希望を第一に商売するということだが、これを実行するのは容易ではない。なぜかというと、すべて相手の都合を優先しなければならないからである。それは価格であり、品ぞろえであり、店舗管理であり、鮮度であり、従業員のサービスと限りがない。それらのお客さま第一を提供し始めるとお客はそれを際限なく求めてくる。極めて安いという明らかな価値を提供しない限り、お客が求める要求はとめどもなく拡がる。何せ一所懸命働いたお金を手に買い物にやってくるのである。まさに神様扱いを求める。だから納得がいかないとモンスターにもなるのである。

 では、お客さま第一を実現するにはどうしたらいいかということである。まず、トップを始め、経営幹部が本気でそれを実行しようと決断することである。そして、それを徹底して共有する。しかし、それを共有し、実現するのは容易なことではない。

 人にはそれぞれ気分という不確定要素があるからである。同じ現象でも人はその時の感情の位置でその評価を変える。従業員でもお客でもそれは同じである。たとえば、ある時は十分納得できることでも違う時にはそうではないということになる。それをなくす唯一の方法は常に最高のサービスを提供することである。それを実行するのは従業員が自分の仕事と会社に愛情を持っているということが前提になる。しかも、それを全従業員が同じレベルでもつということが基本である。

 では、従業員が会社と仕事に愛情をもっためにはどうしたらいいかということである。
 私たちの周りではサービスという言葉が普通に使われる。このサービスの意味を考えてみよう。ゴルフでもサービスホールというのがある。これはほかのホールに比較して「優しい」という意味である。しかし、欧米にはこの言葉はない。なぜならサービスの意味が違うからだ。サービスには奉仕とか尽力といった意味もあるが「礼拝」の意味でも存在するということである。つまり祈りの行為ということである。そのレベルでお客第一を考えて初めてその入口に立つことができる。そう考えるとお客に100%沿うことがいかに容易でないことかがわかる。

 最高のサービスの原点は感謝と誇りである。所属する企業にこの2つを持たない限り、従業員はお客さまに最高のサービスを提供することはできない。
 強い経営とは従業員がこの2つをしっかり持てる職場環境を実現することである。
 それにはいくつかの具体的な方法が必要になる。
 まず、基本的な条件だが、仕事が好きな人間を集めるということである。好きでないことで成功するのは極めて難しい。まさに好きこそものの上手なれである。ついで経営者が目指す着地点をはっきり意識することである。あとはそれを実現するために何をするかを具体化することである。その思いを実現すれば競合に明らかな差がつく企業、店舗ができるはずである。

 隣の競合店を見てそれなりの対策を立てるやり方はもはや何の役にも立たない。Make a Difference、違いがわかる店づくりをどう実現するか?
 新業態も地域連合もそこに目標を置いての行動ということになる。

(了)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

今、小売業に何が起きているのか チェーンストアの歴史と現在地(14)

$
0
0

アメリカ・チェーンストア巡り ホールフーズ・規模拡大の問題と先進性の問題(後)

店頭に見える変化・ホールフーズ ワシントンDC Pストリート店

 朝7時から夜10時半まで営業のこの店も、すばらしい売り場である。デリカも充実し、スープを始めデリカテッセンの充実は目を見張る。ちょうど昼時、2階のイートインスペースには地元のタクシードライバーも食事に来ていた。

さまざまなかたちで提供される野菜。鮮度維持、加工、陳列に多くの人的コストを費やして独自性を出す

さすがのホールフーズも店舗数が400を超えたあたりから価格戦略から逃げられなくなった。クオリティーと価格志向が同居する売り場。カットフルーツと価格訴求型PB牛乳

ホールフーズの宅配専用ボックス。コスト的には問題が多いが、本格的に宅配に参入しなければならない事情がある

イートインスペースから見えるカラフルな売り場。食事をしながら食材の購入も考える?

レジ待ちはどこの国でも嫌われる無駄な時間。ホールフーズにも買い上げ点数の少ない顧客用の専用レジがある。屋上駐車場には何台かのタクシー。ドライバーはこの店で食事をする

 アメリカ流通業の実態は、限られた時間のなかで店を見るだけでは十分に理解できない。店はあくまで1つの現象に過ぎないからだ。ホールフーズのレジ外側に宅配用ロッカーを設けていたのは消費のトレンドに抜かりなく対応しなければならないことを示している。しかしその対応がどの程度の効果につながるかは誰にもわからない。

 豊かで多様な東海岸の暮らしの中にはそれこそ無数の商いのかたちがある。個人商店から大手チェーンまでその商売のやり方はその生き方でもある。それがいいか悪いかはすべて顧客が決める。誰に何をいくらでいくつ、どんな売り方で? 商業者にとって尽きないテーマである。

(了)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

フードウェイグループ 専務取締役に後藤英和氏

$
0
0

後藤 圭介 氏

 フードウェイグループは3月8日、方針発表会を開催し、後藤英和取締役が専務取締役に執行役員後藤和洋氏が取締役に就任すると発表した。4月に開催する株主総会および取締役会において正式決定する。

 また、昨年12月にフードウェイHDを設立し、持ち株会社制を採用したことも併せて発表した。スーパーマーケット部門のフードウェイと精肉部門のミートイン・ハイマート、エムツーがフードウェイHDの子会化となる。

 現在グループ合計230億円の売上高を5年間で倍増となる500億円を目指すという。
 冒頭のあいさつに立った後藤圭介代表取締役社長は「売上高500億円の規模がないと小売業として強みを発揮できない」として業容拡大へ向けた決意を示した。フードウェイ会の元会長(株)フランソア代表取締役社長杉原仁氏はベクトルを合わせ「チームフードウェイ」として支えていくことを表明。乾杯に立った(株)アキラ水産会長兼社長安部泰宏氏も「後藤会長のパワーをもっていどめば売上高500億円は必ず達成できる」とエールを送った。

杉原 仁 氏

安部 泰宏 氏

<COMPANY INFORMATION>
■(株)フードウェイ
代 表:後藤 圭介
所在地:福岡市西区小戸3-24-53
設 立:2000年6月
資本金:7,300万円
URL:http://www.foodway.co.jp

■(株)ミートイン・ハイマート
代 表:後藤 圭介
所在地:福岡市西区小戸3-24-53
設 立:1993年5月
資本金:7,500万円
URL:http://www.foodway.co.jp

■(株)エムツー
代 表:松岡 裕史
所在地:宮崎県都城市宮丸町2798-3
設 立:1997年12月
資本金:1,000万円
URL:https://emutu.co.jp

イオン延岡SC、30日にリニューアルオープン

$
0
0

 イオン九州(株)は30日、イオン延岡ショッピングセンター(宮崎県延岡市旭町2‐2‐1)をリニューアルオープンする。開業から22年目のリニューアルに向けて、海・山・川の自然に囲まれた延岡をイメージしたシンボルマークを作成した。

 店内に50坪のイートインスペースを設置。県を挙げて普及活動を行う「日本のひなた宮崎県」をコンセプトに「ひなたCafé」と名付けた。スギ素材(丸太)の生産地という地域の特性を生かした売場づくりと、県の「木育」活動の一環で、2階のベビーコーナーに県産のスギやヒノキといった木材を使用したコーナーを設ける。シンボルマークの作成、コミュニティースペースの設置などを行うことで、いっそうの地域密着をアピールする。

 専門店ゾーンを約200坪拡大し、延岡で初出店となる「カルディコーヒーファーム」のほか、ウェアやアクセサリーなどの人気ブランドを取り扱うセレクトショップ「グリーンパークストピック」、大分の人気菓子店「お菓子の菊家」などが新たに出店する。

<日刊マックス流通のご案内>

 日刊マックス流通は沖縄を除く九州地区の食品スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストアなどの小売業の情報を、土日祝日を除く毎日タイムリーに配信しています。現在、1カ月間に限り、無料で配信させていただきます。無料試読希望者は、下記のメールフォームでお申し込み下さい。

※「日刊マックス流通メルマガ」試読申し込みフォームはコチラ >>

小売業―かつてない激変期(1)~道路が先か車輪が先か

$
0
0

 長い時間をかけて徐々にという場合もあるにはあるが、歴史をみるとたいていの場合、変化というものは急激に訪れる。
 人類が車輪というものを発明してすでに4,000年以上経つという。ずいぶん昔のことに思えるが、石の道具を使い始めた石器時代からの数万年を考えればごくごく最近の出来事でもある。
 気の遠くなるような時間を過ごしてやっとのことで人類が生み出した車輪は、モノを運ぶ手段として目覚ましい効果を発揮する。交易や侵略を従来に増して容易にし、人の交流による文化の発展やさまざまな分野の技術の交換、発展にも小さくない貢献をしたはずだ。
 車が生まれることによる大きな変革が起こった時代に現代を重ね合わせればどうだろう。パーソナルという言葉が一般化したのはコンピューターがそれまでのメインフレームから小型化し、個人がそれに接することができるようになった95年あたりからだろう。この年にはウインドウズ95が発売された。それから間もなく、ワープロが世の中から消える。
 そのほかにもいろいろなところで「パーソナル」と呼ばれる「個化」が進んだ。家庭でも個室が一般的になり、公衆電話は家庭電話に代わり、さらにそれは携帯電話になった。そして今やスマホという最新のパーソナルツールに進化し日常生活を根底から変えようとしている。

ラスト1マイル

 宅配の用語の中に「ラスト1マイル」というものがある。もともと通信業界用語だったこの言葉が小売業に使われ始めたのは、エスカレートするネット通販の過熱がきっかけである。
 長い間、通販は折り込みチラシやカタログと電話、はがきの組み合わせ、さらにマークシートでの注文というのが主流だった。しかし、パソコンというツールが生活の中に浸透し始めると、それを利用した購買行動が生まれることになった。最初パソコンによる取引はB to Bといわれる企業同士の取引だったが、いつの間にか、それはB to Cと呼ばれる小売業と消費者間の取引にも当たり前のように使われるようになっている。

 問題はそのことによって何が起こったかである。分野や国に関わらず、大きな変化が起こる時、影響を受けるのが既存の道具や組織である。長い歴史を経て積み重ねたそれらは、一見強固な存在としてそびえ、多少のことではその力は揺るがないと誰もが考える。しかし、所詮それは錯覚に過ぎない。
 環境という条件が変化するとき、それに対応できなければあっというまにその牙城が揺らぐのは誰もが知る通りである。
 バブル崩壊時の証券、金融機関、不動産業者、そして最近の家電業界。永遠に続くと思われていた大企業がいとも簡単にその姿を一変させる。そして、バブル崩壊やリーマン・ショックに匹敵する環境変化がまたしても今起こりつつある。それがECである。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

西日本鉄道、「エマックス・クルメ」をリニューアルへ

$
0
0

 西日本鉄道(株)(本社:福岡市中央区、倉富純男社長)は16日、西鉄久留米駅に直結する「エマックス・クルメ」をリニューアルオープンする。同店は1969年3月開業の4階建ての商業ビルで、1月27日から3月15日までの約1カ月半、2階の専門店部分の改装工事を進めていた。ハード面の改修工事をともなうリニューアルは2005年以来、13年ぶり。総投資額は約1億3,000万円に上る。

 ドラッグストアの「ココカラファイン」、バッグ・アクセサリーの「Bleu Beuet(ブルーブルーエ)」、300円均一の雑貨店「ミカヅキモモコ」などが新規出店するほか、既存店舗も改装を行った。また、エントランスには久留米の伝統工芸品「久留米絣」のデザインが施されるなど、地域色も出している。広告のメインビジュアルには、仮面ライダー1号の本郷猛役を務めた俳優の藤岡弘氏を起用した。

【矢野 寛之】

小売業―かつてない激変期(2)~構造変化 新たなツールが変えるもの

$
0
0

 グラフは2016年度までのEC市場の拡大と小売業におけるEC化率である。グラフでもわかるように、売上の伸びはこの5年で2倍近くに拡大している。昨年5%を超えたEC経由の売り上げはそう遠くない時期に20%近くまで拡大するというのが大方の見方であるが、それはそのまま既存の小売業のシェアが低下することにつながる。

 団塊の世代が現役を引退し、合わせて晩婚化と少子化で人口減と高齢化が進む我が国の消費市場にはもはや大きな成長は望めない。加えて、過去の手法に基づく販売手段の陳腐化も急速に進む。その最大のものがECによるショッピング形態の進化だ。
 国の内外でこの大きな将来変化を見越して生き残りに必要なECに対する投資が盛んだ。大企業は近い将来必要になるもので、自分で生み出す時間をかけられないものはM&Aで積極的に買収する。そこには競争のためのツールの入手が遅れるとすべてを失うという危機感がある。

これまでと何が違うのか

 ECを介しての買い物の特徴はまず宅配にある。時間が大きな価値をもつようになった近現代では利便性と時間の節約のためにEC以外のツールでの宅配が生まれ、発達した。しかし、型録やチラシ、新聞広告といったツールで紹介できる商品のアイテムは高々知れているし、価格比較も十分ではない。だから長い間、消費ツールの主流にはなれなかった。
 さらに食品、とくに生鮮食品に至ってはまさにリアル店舗の店頭が買いものの主戦場で、その充実が小売企業の大きなテーマだった。

 リアル店舗のメリットは「直接現物が確認できる」ことにある。色、形、量、価格、品質など、間接購入で確認しづらい部分を自分の手に取ってたしかめられる。とくに生鮮食品はその品質劣化の速さもあり、通販に馴染まないというのが通説だった。
 とくに団塊の世代以前の生鮮に対する考え方は鮮度が最優先で、そのニーズを満たすためにさまざまな研究、工夫が多くのスーパーマーケットで行われたがいずれも成功とは言い難く、生鮮宅配の分野は長期の停滞を余儀なくされている。

 昨年4月からアマゾンはアマゾンフレッシュという生鮮宅配を始めた。彼らは、ずいぶん以前に同じシステムをアメリカで始めたものの、その拡大、一般化を容易に実現できずに今に至っている。結果として、リアル店舗のホールフーズを買収し、システムの改善を図ったと推測される。

 しかし、今その分野に大きな変化が表れている。1つはECの一般消費者への浸透だ。ミレ二アル世代以降の消費者は生まれたときからパソコンがそばにある。
 さらにスマホの機能拡大でその利便性は格段に進化した。今や彼らはスマホを使ってモノを買うスタイルに何の抵抗もない。商品選択も発注、返品も指先1つで済ます。加えて、ラスト1マイルの変化である。従来は商品の配送には運送会社か自社システムを使うのが普通だった。しかし、今その部分にも画期的な変化が起きている。それは、デジタル化と配送市場の拡大、さらに働き方の変化が生み出す新しいラスト1マイルのかたちだ。

 考えてみれば過去、小売業のラスト1マイルはほとんど買い物者自身が担った。店に行き、自身の目で選択し、自分で持ち帰る。とくにスーパーマーケットではその傾向が強く、一般店の配達や生協的な宅配も大きな市場を形成することはなかった。鈴鹿市に本部を置くスーパーサンシのようにあきらめることなく宅配を続けてきた企業もあるが、大部分のスーパーマーケットは試行錯誤の末にそれをあきらめたという歴史がある。
 しかし、スマホというツールの登場と嗜好の変化で、宅配を取り巻く容易でない環境は大きく変わる。

 その変化の兆しはかなり以前に始まった。その象徴的な例が新聞の購読率の低下である。日本の小売業はほとんどがセールの案内を新聞チラシに頼っていた。しかし、この30年近くの間新聞の購読率は低下を続けている。
 新聞協会の調査では2000年に4,730万部を数えた一般紙の発行部数は年々減り続け、2017年には3.870万部になっている。
 1世帯あたりの購読数に換算すると、1.13部から0.75部にまで低下したということだ。率に換算すれば45%近くの減少になる。とくに朝、夕刊のセット部数は1,800万部から970万部へと半減している。
問題は若い層の新聞離れである。新聞の大きな部数減は小売業にも深刻な問題をもたらす。チラシによる販売推進がうまくできなくなるということである。
 そこで新聞に代る販売促進ツールの検討という戦略転換が求められる。若年層の新聞離れは単なる活字離れが原因ではない。情報収集のツールが新聞からパソコン、スマホに変わったことが大きく影響している。
 それはさらなる変化として商環境を変え、これからもさらに加速する。スマホが小売業の販促を個人に伝えるというかたちである。今や、小売店のアプリをスマホに取り込めば定期的にチラシを受け取ることができる。それがさらに注文、配達の生活スタイルに進行することは必然の理だ。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。


IKEA Touchpoint熊本、7月31日に閉店

$
0
0

ikea.comより

 スウェーデン発祥のホームファニシングカンパニー、イケアの日本法人イケア・ジャパン(株)(本社:千葉県船橋)が、IKEA Touchpoint熊本を、7月31日で閉店すると発表した。約3年間のテスト期間を終えたためとみられる。

イケア・ジャパンPR事業部のコメント
 Touchpointの形態は、日本のみならず世界中のイケアでテスト開店してきました。営業期間に関しては、状況をみて柔軟に検討を続けてきました。熊本地震の震災直後に始まった支援活動に関しては、閉店後も継続します。Touchpoint当初よりも、デジタル化、オンラインへのニーズは強くなっており、今後はさらにオンライン、都心部への出店に注力していきたいと考えています。

【内山 義之】

全国の選りすぐり食品をそろえる専門店、イオン宮崎にオープン

$
0
0

開店から長蛇の列が並ぶ

 (株)インパクトワン(本社:熊本県玉名市、飯川寿朗社長)はきょう(3月13日)、イオンモール宮崎内に食品専門店「インパクトワンプラス」を開店した。

 同社の店舗展開は熊本県荒尾市にある、あらおシティモール内に続き2店舗目。同店舗はノースモール1階に位置し、50坪のスペースで、栽培や製法、味、安全・安心にこだわった全国各地の食品約1,200アイテムを取り扱う。店舗では開店直後から、全国の選りすぐりの逸品を求め、長蛇の列ができている。

 同社では食品卸売業として、1地域1企業で競合が起きない取引形態を行っている。専門知識をもった営業スタッフをそろえており、売場全体を確認しながら、的確な商品開発や催事企画の提案が行えるのが特長。昨年10月から、自社店舗を通じての展開を行い、良質な食品を消費者に届けている。

インパクトワンプラス 店舗外観

小売業―かつてない激変期(3)~新しい職種

$
0
0

 韓国では高齢者の無料バスを利用した個人宅配が話題になっている。年金システムが不十分な韓国では高齢者が年金だけで暮らせないという事情もあって、高齢者による宅配が広がっているのだという。
中国でもアプリを使った個人による請負配達が拡大している。中国ではアリペイやテンセントの個人決済システムの浸透で、賃金や代金の決済が簡単にできるだけに今後ますますの広がりが予想される。
個人配達者はアプリを使って待機し、配送会社からの連絡で荷物の受け取り配達を行い、賃金や報奨金をすぐに受け取ることができるからだ。加えて、顧客からの結果評価が配送会社のもとに届くようになっているから、労使双方にメリットがある。

 アメリカでも同じような現象が起きている。たとえばウーバーのように宅配のニーズを取り込む「ドアダッシュ」。飲食専門の配送会社がレストランから売上の20%を受け取り、ダッシャーと呼ばれる個人宅配者にアプリで配送を発注する。宅配者は配送可能距離とそのほかの条件を設定し、だいたい5~8ドルで配送を請け負う。加えて、チップは全額自分のものというシステムだ。そんなダッシャーの中には1日に200ドル以上稼ぐ人もいるという。このシステムが我が国に伝播するのは時間の問題であるといってもいい。

競争者の増加が進化を促す

 ECやそれに付随するシステムの参加者は今、急激に増えている。参加者が増えればそこに競争とそれにともなう改善が加速度的に進む。これがかつてとは決定的に違うラストワンマイルの現場だ。
 Googleが主催するGoogle・ルナ・エクスプライズという優勝賞金3,000万ドルの純民間月探査機のコンテストがある。世界中から30チーム前後が参加、撤退を繰り返しながら無人月探査機の開発を競っている。日本からもHAKUTOというグループが参加している。問題は開発した探査機をどんな手段で月に送り込むかだが、多数の開発者がアイデアを競っている。
 直接開発ではなく、複数の競争者を世界中から集める間接開発という手段を講じるGoogleのこの考え方は「衆知こそ進歩の母」というスタンスだ。
 異分野や異質の研究者による競争、協業が生み出す結果はおそらく、直接開発よりずっと投資効率が高い。
 競い合う参加者が増えるほど、取り組むテーマの完成度は向上する。新しい販売形態変更の試みにもこれと同じことがいえる。自身で大金をかけて開発するより、広く世界の知恵を集める。そのほうがはるかにローコストでしかも収穫が大きい。

 インターネットという新たなツールが生まれたことは、従来の流通業に大きなインパクトを与えた。しかもそれはさらなる進化を生む。
 社会的認知を得たECはAIの進化をともない、従来、クリアが困難だった問題点を比較的容易に解決するだろう。あとは実験と経験、反省を繰り返すことを加われば改善はさらに進む。ECはまさに小売のスイングバイなのである。

ブレークスルー的現象

 交通事故統計が始まった当時、1948年前後の交通事故死は車の総数が3万台に過ぎなかったが3,790人だった。そして昨年、車は8,000万台と激増したにもかかわらず、ピーク時には1万6,000人を超えた死者が3,694人と激減した。その理由は様々だが、問題対策を重ねることで結果が劇的に変わることを物語る。手段の拡大と参加者の拡大は今後のEコマースの革新的拡大に重なる。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

くまモンも来場、肥後よかモン市場が3月17日にオープン

$
0
0

 17日、JR熊本駅に鹿児島本線と豊肥本線の高架ホームが開業する。JR九州では同日、駅周辺まちづくりプロジェクトの第1弾として、この高架下に商業施設「肥後よかモン市場」を開業する。肥後よかモン市場内には熊本市とJR九州が共同運営する「熊本駅総合観光案内所」が置かれる。

 それにともない17日、午前7時45分ごろからJR熊本駅コンコース(新幹線改札口前)で開業式典を開催する。
 式典には大西一史熊本市長、持月裕如熊本駅長のほか、「熊本県営業部長のくまモン」も出席する。また来場者には特典として来場特典を用意しているという。特典の詳細についてはホームページにて。

▼関連リンク
・肥後よかモン市場

■肥後よかモン市場 施設概要
所在地:熊本市西区春日3-15-30(熊本駅改札口前)
延床面積:7,5002
店舗面積:3,900m2
店舗数:物販33店舗、飲食18店舗、サービス8店舗、観光案内所
営業時間:(物販)午前8時~午後9時 (飲食)午前11時~午後11時
(熊本駅総合観光案内所)午前8時~午後7時
※一部店舗は、上記の営業時間と異なる

中洲の「ミスド」、ツルハドラッグに早変わり

$
0
0

 西日本最大級の歓楽街、中洲。そんな夜の街で32年間営業してきた「ミスタードーナツ福岡中洲ショップ店(以下、中洲店)」が、その歴史に幕を下ろしたのは今年1月末のことだった。
 それから2カ月を待たず、中洲店の跡地はツルハドラッグへと生まれ変わる。オープン予定日は3月下旬頃を予定している。

 中洲店があった場所は、福岡市地下鉄空港線「中洲川端駅」のすぐ側であり、交通量の多い明治通りに面しているなど好立地。ビジネスマンから、外国人観光客、小さな子どもを連れた親子など、幅広い層の集客が見込まれる。

ツルハドラッグへと生まれ変わる中洲店跡地

【代 源太朗】

サンリブが移動スーパー「とくし丸」と提携~買い物難民対策の一環で

$
0
0

マルショク山王店

 (株)サンリブ(本社:北九州市小倉南区、佐藤秀晴社長)は13日、北九州市内で移動販売をスタートした。同社は、移動スーパーのノウハウをもつ(株)とくし丸(本社:徳島市、住友達也社長)と提携。「移動スーパーとくし丸 サンリブ1号店」として、まずは「マルショク山王店」(北九州市八幡東区)からスタートさせた。同社によると、生鮮食品、加工食品、日用雑貨など約400品目1,200点を店舗で積み込み、1商品に10円の販売手数料を上乗せして販売する。巡回範囲は山王店の半径5km、約30分圏内で、3コースを週2回ずつ回る。高齢化が進む市街地を中心に回り、買い物に行きたくても行けない「買い物弱者・難民」を救済する目的もある。

 「地域貢献として何ができるかと考え、お買い物にお困りの方の支援、見守りがおこなえる『とくし丸』が最適だと判断した」(同社広報)。1号車のみ同社がとくし丸と直接契約し、ノウハウを蓄積した後、2号車以降は同社が個人事業主を募り、車両台数を増やしていく方針だ。来年2月末までに北九州市内で20台を目標としている。

【矢野 寛之】

小売業―かつてない激変期(4)~AIが変える未来

$
0
0

 アマゾンのフィルフィルメントセンターで話題のキバロボットはその典型だ。2003年、ボストンで創業したこの会社は2012年、アマゾンに7,750万ドルで買収された。
 350kgの積載能力をもつこのルンバ型ロボットは床のバーコードを読み取り人間よりはるかに速いスピードで在庫をピッキングし、ピッカーと呼ばれる出荷スタッフのところまで運んでくる。
 ロボットには照明も空調も要らない。人件費の節約は1台あたり9万ドル。1万台の導入で9億ドルにもなる。施設1拠点あたり、2,200万ドルの経費節減になるという。ロボット化を進めるほど販売管理のコストは小さくなるのである。このロボットをアマゾンはすでに3万台以上導入している。
 このシステムのさらに大きな利点はフィルフィルメントセンターと呼ばれるピッキング&配送施設の建設期間だ。従来型だと普通1年近くかかるセンターの建設期間がわずか数週間で済むのだという。構造的な問題を革新的なアイデアでクリアするとその効果が劇的に表れるのはかつての産業革命と同じ構図だ。海外の小売業がかつてのリアル出店に代ってネットという無店舗で我が国の小売業界に参入する。それがアマゾンなのだ。

 表2はウォルマートとコストコの売り上げと粗利率、経費率の推移である売り上げと粗利益率の伸びが鈍化し、経費率が高まっているのに対し、コストコの数値は経費率の上昇をうまく吸収している。
 特筆すべきは1店舗あたりの売上の高さだ。以前は100億に届かなかったコストコだが今では170億という売上を獲得している。この間、粗利率と経費率がほとんど変わっていないのは経営精度の高さを物語る。コストコの特徴は独自の商品政策にある。同一商品競合というケースがほとんどないコストコはその商品を独自化することで商圏と買上単価を大きくしている。しかし、このような企業でも今後同じような手法で成長が続くかどうかは分からない。微増ではあるが経費率が上昇しているのだ。

 ウォルマートはその売上の大きさもあるが伸び率は明らかに鈍化しており、粗利率の改善も思うように行っていないように見える。さらに大型店舗の建設が停滞しているせいか1店舗あたりの売上も停滞している。どう見ても状況はよくない。

遅れは致命的

 キバロボットは、最初、ウォルマートに自社のシステムを売り込みに行った。しかし、ウォルマートはそれを断った。当時のウォルマートのトップはECの急激な拡大が予測できなかったのかもしれない。その後、キバはウォルマートに提示した価格よりずっと安くアマゾンに提示した。アマゾンはこのシステムを買い取り、大きな効果を手にしただけでなく、アマゾンロボティクスという別会社にして、さらなる改善を進めている。
 いくら過去の業績が好調でも新しい流れに乗り遅れればそれを維持することはできない。ウォルマートもこのことを学習してか、出店を控えて代わりに積極的なEC関連の投資を始めた。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。


小売業―かつてない激変期(5)~変わる価値観、小さな食ライフスタイルの変化が

$
0
0

 生鮮食品に対する嗜好性の変化は今後のスーパーマーケットの経営に大きな影響をおよぼす。グラフ2を見てほしい。水産物の1人あたりの消費は15年前から30%以上減少している。それにともない、スーパーマーケットの水産売り場に異変が起きている。

 ひと昔前までは主婦のほとんどは魚の処理ができた。しかし、その親から調理技術を受け継ぎ損ねたミレニアル世代はそうではない。鮮魚の加工、処理作業は思いのほか手間がかかる。四半世紀前まではこの手間は家庭が担っていた。しかし、現在ではそれがすべて店舗にゆだねられる。店舗にとっては想像以上のコスト負担である。これは水産部門で利益を手にするのは容易でないということにつながる。
さらにマンションなどの集合住宅での水産物の調理は臭いや後始末の問題も発生する。下処理がほとんどいらない肉類に比べて、鮮魚などの水産物はその調理だけでなく鮮度保持が難しいのも、需要減にさらに拍車をかける。

 高度成長とともに、海外からの輸入や家庭内調理を主婦に代って引き受けたスーパーマーケットによる簡便性の提供で消費が伸び続けた水産物だったが、上記理由などでバブル崩壊の景気低迷と軌を一にするようにその消費は低迷を始めた。さらに世界的な鮮魚需要の伸びと気象条件変化による漁獲量の減少が魚価の上昇を招き、消費の抑制はさらに進行する。

1つの部門の転換が全体にも大きく影響する

 水産部門のもう1つの問題は人手不足だ。水産部門はその仕事の特性から募集をかけても人が集まらない。とくに水産物が食卓に上る機会が少なくなった世代は、水産物への馴染みの薄さも手伝って仕事としての水産物部門を敬遠する。いまやスーパーマーケット業界団体の調査では70%以上の企業が水産部門の人手不足に直面しているという。

 人手が掛けられないということは付加価値の高い商品づくりができないということである。店舗での価値付加ができなければ残されるのは効率化だ。そのためにはセンター製造や外部委託製造が避けて通れない。水産物の加工食品化が進行し、売り場が均質化する。近い、安い、手間なしというニーズが生鮮食品の分野にも必須条件として定着するのだ。店や店舗ごとの差がなくなればわざわざ店に足を運ぶ必要は薄くなる。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

小売業―かつてない激変期(6)~簡便性かこだわりか?業態枠も消える

$
0
0

 調理時間と技術的な問題で進むのがキット宅配だ。手ごろな価格での食材セットの宅配は調理時間の問題だけでなく、それにともなうごみ、無駄の発生を抑制するだけでなく、高級レストラン並みのレシピ付きということで今後、大きく伸びる可能性がある。そして、この分野はスーパーマーケットでなくても参入壁は高くない。 こんな消費スタイルの変化が招くのが、スーパーマーケットの位置づけの変化だ。

 以前はスーパーマーケットとドラッグストア、コンビニなどの業態の違う店は競合しないというのが普通の見方だった。それは食卓のメインである生鮮食品がそろわないことで食のワンストップショップができないというのが大きな理由だ。しかし、今やそれは過去の話になりつつある。ドラッグストアは従来の医薬品、雑貨に加えて、加工食品、日配品を取り入れ、最近では生鮮食品にまで取り扱い品目を広げて限りなくスーパーマーケットに近づく。中にはコスモス薬品のように売上の半分以上が食品というドラッグストアもある。

 若い消費者はドラッグストアで生鮮を買うことにかつての主婦のような抵抗感はない。さらに、ホームセンターもスーパーマーケットとのコラボレーションや自らも食品を品ぞろえすることで顧客の利便性を図る。どう見ても厳しいスーパーマーケット包囲網である。

 生鮮という高コスト部門を抱えるスーパーマーケットは、15%以下での粗利では運営できない。とくにお客から見て価格比較が容易な加工食品や日配品での価格競争は不利になる。

新たな難敵

 インターネット通販企業の新たな試みも次々にその姿を現す。アマゾンはダークストアと呼ばれる300坪程度の施設を利用したアマゾンフレッシュ ピックアップというドライブスルー専用の施設を実験オープンした。

 ネットで注文した生鮮品を専用駐車場で受け取ることができるサービスだ。最短15分で注文品を受け取ることができる。注文品はスタッフが車まで運んでくれるので車から降りる必要はない。

 そのアマゾンだが、ネットという無店舗で成長してきたにもかかわらず、昨年高質スーパーマーケットのホールフーズを買収した。その結果、思いがけない反応を示したのが既存のスーパーマーケットだ。
 アメリカで食品宅配といえばオンデマンド買い物代行のインスタカートだ。インスタカートは地域ごとにスーパーマーケットと提携していて、会員登録するとパーソナルショッパーと呼ばれる代行者が買い物を代行してくれる。ホールフーズも同社と契約しており、アマゾン買収後の結果がどうなるかと注目されたのだが、競合スーパーはアマゾンとインスタカートの組み合わせに予想以上の反応を見せた。全米のスーパーマーケットがインスタカートにアプローチを始めたのだ。日本でもおなじみのアルバートソンズや一部のクローガー店舗、パブリクスやHEBに加えてコストコやディスカウントのアルディーまでもが具体的な取り組みに舵を切った。まさに半狂乱的反応である。

 しかし、それでも新興企業の優位性は揺るがない。その利点は既存の設備を持たないことだ。既存の設備は改善するにも維持するにも廃止するにも大きなコストをともなう。
 たとえ思い切って既存店舗に投資しても、新たな店が生む売上には遠く及ばない。いわゆる投資効果が薄いのだ。店舗の陳腐化に対して、普通の企業が取るのが経費節減策だ。陳腐化した設備や店舗内装をそのままにして販売管理費だけを必要以上に削ろうとする。

 小売業の場合、大方の経費は固定費だ。それは人件費も同じで、経営者は一番わかりやすい人件費を削るのが一般的だ。しかし、スーパーマーケットの人件費は生産材料でもある。材料を削れば当然、生産物に影響が出る。その陳腐化で今滅びつつあるのが、かつてアメリカ小売業界の王者だったシアーズだ。同じ位置づけだったKマートと合併して再起を図ったが、旧タイプの店を改善できなくてただただ閉鎖を繰り返している。当然、その先行きは暗い。

 同じような現象は我が国の大手小売業も経験した。その典型がダイエーだったが、九州でも壽屋やユニードが同じ状況で姿を消している。
 その点、新たに事業を起こそうとする場合、そのようなコストは不要だ。もちろん、新たな試みが必ず成功する保証はない。しかし、新興企業の試みは少なからず既存企業に影響する。たとえば、前出のダークストアだ。普通のスーパーのように売り場はあるが、一般客が入店することはできない。そこには窓も顧客サービス用の設備もない。施設としては極めてローコストである。
 お客からの注文品がスタッフによりピックアップされ、袋詰めされる。もちろん、このやり方がうまくいくかどうかはある期間を経なければわからない。しかし、先行きが分からないからといって、何もしないではすまないのが既存企業の悩ましいところだ。先行者と同じようにコストと危険をともなう新たな試みを実行しなくてはならない。たとえば、HEBやウォルマートなどの米小売業はカーブサイドピックアップと呼ばれるドライブスルー型の施設を設ける実験を始めている。しかし、これらの実験は効率化と逆行する。

 生鮮宅配も同じである。しかし、これは対岸の火事ではない。アメリカで起こっていることは必ず時を置かずして我が国の業界にも飛び火するからだ。これらのことを考えると新たな試みに否応なく対応を強いられる既存のスーパーマーケットの旗色はどう見てもよくない。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

小売業―かつてない激変期(7)~まだあるリアル店舗の難題

$
0
0

 図1と図2は日米の競合例を示したものである。日米とも所によっては車で10分程度の範囲に十指に余る競合がひしめくというのは今や珍しくない。つまり、出店の意志はあっても思ったように出店できないのである。とくにスーパーマーケットはある程度の商圏人口がないと出店は難しい。運営コストが高いスーパーマーケットはある程度の坪あたり売上がないと採算が取れないからである。商圏を無視した出店は命取りになる。この状況に無店舗の競合が参加するのだから、その苦境は改めて説明するまでもないはずだ。

※クリックで拡大

こだわりのスーパーマーケットは生き残れるか?

 「こだわりのスーパーマーケット」といわれる企業がある。しかし、その範囲は結構広い。普通のスーパーマーケットのお客1人あたりの買い上げ単価は1,800円前後である。高質の場合はこれが20~50%増える。ただ、高質スーパーマーケットの成立条件は厳しい。

 表1はある高質店舗の集客を数値で検証したものである。実績数値は競合が激しい昨今、競合店を通り越して来店してもらうことがいかに容易でないかを物語る。世帯支出は福岡市の年間食費支出86万4,000円を基に算出したものであるが、足下1kmのシェアでさえ20%に過ぎない。このことは競争店が多い地域ではどのような差異化をもってしても商圏の拡大が容易でないことを物語る。このことは通常型の場合のシェアの問題を如実に示している。通常型の場合、3キロ以遠からの集客は期待できない。さらに足下シェアを考えるとせいぜい高質型の7掛け程度である。そう考えるとこのケースでは通常型スーパーマーケットの売り上げは多くても10億程度いうことになる。これが現実である。

 高質店の難しさはもう1つある。それは対象世帯の問題だ。エンゲル係数といわれる食費支出は家計支出のなかで最も大きいものの1つだ。日本のエンゲル係数は総支出の4分の1を超えている。当然、価格より質を優先できる世帯は限られる。

 ただ、表1に見えるようにこの店舗の売上の約5%が3km以遠からのお客で占められていることだ。もし、この店が通常型ならそれは不可能だ。それだけではなく、足下商圏からの集客も当然、低下するはずだ。そんな見方をすれば、高質店はそれなりの戦略として十分効果があるということができる。しかし、そこにはもう1つの問題が立ちはだかる。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

小売業―かつてない激変期(8)

$
0
0

 グラフ3は国民生活調査に見る我が国の年間所得の分布である。中央値で見る単純平均では年間食費支出は100万円前後になる。しかし、それでは高額商品が多い高質店で日常的に買い物はできない。仮に年収1,000万円以上の世帯に限ってそれが可能と仮定すれば高質的な店舗がターゲットにできるのは総世帯の5%前後に過ぎないということになる。
 この傾向はアメリカにも当てはまる。我が国に限らず、高質店がスーパーマーケットの主流になれないのは、市場そのものがごく限られているからだ。

※クリックで拡大

価格弾力

 高質店は店舗、商品の細かいところに付加価値を付けなければならないから、販売管理費が高くなる。そうなると粗利益率を高くするか売り場面積あたりの売上を高くする必要がある。
 しかし、それが実現できる立地は限られる。所得上位5%の世帯がある程度集中していることが必要だからだ。しかし、そんな地域はごく限られている。

 粗利益率にしても同じである。食品は1gあたりの価格が一定以上になると、いきなり売れなくなる。たとえば1個300gのリンゴが198円と148円ならばその売り上げ数は大きく変わる。牛肉にしても同じであり、質が高いから高い値段でも売れるかというとそうはいかない。この傾向はほぼすべての商品に当てはまる。ある商品の価格を10%値上げしたときに、売上が5%減少したとするとその場合の価格弾力性は0.5ということになるが、食品の場合はこの弾力性が極めて大きい。
 支出頻度が高い食料品購入に関しては、普通の消費者は高い高質品より低価格の商品を選ぶということだ。もちろんこのことは高質店にも当てはまる。質だけを高めても安いという顧客心理の原点を忘れては店そのものが成立しない。お客の要求は厳しいのである。

 そんなお客の志向に沿って低価格を目指せば、そこには自ずから価格競争が起こる。結果として高い粗利率は取れない。
 高質店も例外ではない。モノを売ることで30%を超す粗利益率をとるのは容易ではないのだ。せいぜい28%程度が限界である。もちろん普通のスーパーマーケットはそれから5%程度低くなる。これはアメリカでも同じことでアマゾンが買収したホールフーズの35%は別として、大方のスーパーの粗利は20%前後である。
 そのホールフーズにしても、35%の粗利獲得のために30%の経費率をかけている。1店舗あたりの売上が40億円、単位面積あたりの売上が大きいホールフーズの30%の経費率というのは極めて高い。九州でいえばルミエールの3倍である。
 ちなみにアメリカ最大のスーパーマーケット、クローガーの経費率は17%弱。1店舗あたりの平均売り上げは29億円程度である。

 さらに高質店の一番の問題は立地に大きく制限されるところにある。ひとことでいえば出店に限界があるということである。しかし、商品、店舗雰囲気など通常型とまったく違う店をつくることでお客にとって「わざわざの店」になれば特別な存在として生き残ることができる。それが前述の高質化戦略ということになる。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

小売業―かつてない激変期(9)

$
0
0

いかに異質化をつくりだし、「わざわざの店」を維持するか

 結論を先にいうと、高級店はスーパーマーケットとしては成立しない。ニューヨークや東京の一部の場所で特殊型店舗として運営しているイータリーやディーン&デルーカ、紀伊国屋などのごく小さな経営形態を含んでもその多店舗化と広域化は実現性が薄い。しいていえばホールフーズとウェグマンズだが、それでも出店の限界はある。では、高質化とディスカウントのハイブリッドはどうなのかということになる。

 その好例が埼玉本拠のヤオコーと福岡本拠のハローデイである。ヤオコーのMD利益率は28%、ハローデイのそれは23%前後。この差はおそらく地域的なものであるが、店舗スタイルはよく似ている。この2社の共通点はオーナーの思いである。2社のオーナーの思いの底にあるのは「make a difference」と「employee first」である。このこだわりで特別な店をつくる。これは標準化や効率化とは別の世界だ。人や店をレベルアップすることで、顧客によその店では得られない快適性を提供する。この2社に共通するのは「無駄の効果」。効率と対極のものである。ごく限られた世界かもしれないが、その存在意義にはたしかなものがある。だが、トップの強い差異化への強い思いがなければその実現は不可能である。

 ディスカウントの場合、お客の期待はその価格にある。価格が安ければたいていのことは我慢するのである。しかし、高質店ではそうはいかない。サービスの質だけでなく、価格も含めて、あらゆるサービスに対し、そのデマンド(要求水準)は高くなる。それをクリアしなくては高質店の運営はできない。それにはそこに働く従業員の質が大きく影響する。

 たとえば高質店としてかつて一世を風靡したクイーンズ伊勢丹。伊勢丹百貨店から半ば左遷のかたちで転じた当時の田村弘一社長は独特の価値観でクイーンズを創った。その原点は「社員が誇りに思う店をつくりたい」。そしてそれは実現した。それこそ、人づくりを含む高質店づくりの原点である。しかし、その人が去るとその継続は容易ではない。

 ハローデイにもヤオコーにしてもこのトップの思いは共通である。偏狭にして純粋。それがなければ高質店はつくれない。だから効率化至上の従来型スーパーマーケットが高質型を手がけても大方はうまくいかない。

 逆に安く売ることに生きがいを感じるというのがディスカウント企業のオーナーである。この2つの信念が店のかたちを決めるのである。

ディスカウントとは何か?

 高質店の対極にあるのがディスカウントだ。ディスカウントの定義をひとことでいえば、通常より低価格での販売ということになる。

 小売業の利益は思ったより小さい。100円のモノを売って2~3円、数%がせいぜいである。言い換えれば、坪あたりの売上が小さくなったり、値下げなど商品の減耗ロスが大きくなれば即、赤字ということになる。

 だから、その経営コントロールに最大の注意を払わなければならない。原価に上乗せする利益は業態や企業によって違う。たとえばユニクロは自前の企画、製造で原価率は40%前後。店舗人員や出店、値下げなどの運営にコストがかかるのでその経費率は40%弱。上記の原価率で5~6%の経常利益率を出す。だが、仕入れ中心のしまむらの原価率は60%前後、その差は20%程度。しまむらの場合は、店舗運営にユニクロほどコストがかからないから経費率は24%程度。それほどの差益率は必要ない。

 当然、1店舗あたりの売上にも大きな差がある。ユニクロの場合は5.6億円程度、しまむらのそれは2.7億程度でユニクロの半分だが、経常率はユニクロとほぼ同じである。もし、この1店舗あたりの売上が逆になったらと考えるとなかなか興味深いがそうならないのが業態の特徴でもある。

 このケースをスーパーマーケットに当てはめればどうだろう。我が国では製造と販売が極めて明確に分かれている。食品小売業が独自に広範な商品を自社生産することは極めて難しい。しいていえばナショナルブランド(NB)メーカーや地方のメーカーにプライベートブランド(PB)を発注することだが、メーカーとしても高品質の商品を低価格で供給することはいろいろな意味で抵抗がある。小売側は安く買って高く売ろうとする。結果としてそう高品質でもない商品が、安くない価格でお客に届くということになる。大手スーパーマーケットのPB商品が思うように伸びないのはこのあたりに原因がある。もちろん、日本人のNB信仰もPBが伸びない大きな理由である。

 一方、経費率が低いドラッグストアならスーパーマーケットより低い値入率で販売することができる。価格弾力性による販売量の差異が発生するのである。

 とくにドラッグストアに対してはスーパーマーケットに求めるほど期待値はない。ドラッグストアでのPB食品購入に対するお客の抵抗は極めて小さいのである。この点でもPB優位性はドラッグストアにある。同じPBでも製造委託する立場によっても大きく違うことになる。

 ドラッグストアの生鮮売り場だが、精肉や青果を中心にそれなりに顧客の支持を得ている。以前に比べて、食品部門の粗利益率も幾分上昇している。これはペリシャブルフーズ(生鮮品や日配品)のお客からの支持、認知度が高まったことを示している。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

Viewing all 777 articles
Browse latest View live